美味しい物を食べて言葉を失うことがありますが、素敵な本を読んでも同じ状態になるのだと、初めて知りました。特に変わったところのない家族が話しているだけのシーンなのに、無言でページを閉じて抱きしめてしまうほど、愛おしいと感じたのです。たぶん自分の精神状態も関係していると考えれば、たとえば一週間後に同じものを見ても、ここまでにはならないかもしれません。でも私にとってあの瞬間は、確かに宝物でした。
たった一瞬がその後ずっと記憶に残る、こんな経験は他にもあります。それは親戚の赤ちゃんが生まれたとき、その子が私の指を握ってくれたことです。この紅葉のように小さな手のひらもいずれ大きくなるのだと考えると、なぜか急に胸が熱くなりました。そうです、このように感極まるときは、いつだって突然なのです。
あの子ももう幼稚園に入り、ずいぶんわんぱく小僧に育ちました。そういえば誕生日が近いから、また絵本を選ばなくては。ゲームはいずれ、勧めなくても手にするでしょうから、彼が興味を示すまではと、絵本を送り続けているのですよ。飛行機が好きなので、図鑑にしようかしら。手頃なものがあるといいのだけれど……今度書店に行って、探してみましょう。